強風(2010/9/20):知床expedition

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風が海面を走り、ゴロタ石の浜に張ったテントを襲う。
僕は寝袋の中でつぶれそうな壁を支えるけれど、果てしなく吹く風の相手に疲れ、身体と折り曲げた両足で押さえるようにして再び眠る。

眠っていても風音が耳をつんざく。
やがて強風でテントが倒され、高波がテントを襲い、カヤックも参加者数名も海に流される

・・・・という夢を見る(本当)

現実に数張りテントポールをやられたが、人は無事だ。

モノなんてどうでも良い。人さえ無事ならば。

前日傷んだタンデム艇の修理を朝から行う。
知床expの艇はどれも修理跡があちこちにあってぼろぼろだ。僕の乗っているパフィンは頑丈さが取り柄のポリ艇だが、軽量が取り柄のFRP艇は知床のようなタフな環境ではなかなか扱いが大変だ。

たき火の近くで艇を乾かし、古傷が開いた場所のグラスファイバーをはぎ、そして新たなグラスファイバーを接着剤で貼り付けてゆく。これでまた、海に出られる。

昨日の重たい空とうねった海はどこへ行ったのか。
さわやかな空と穏やかな海へ今日も漕ぎ出す。今日も無事夕食を食べられることを願いつつ。

漕ぎ出すとすぐにカムイワッカの滝が見えてくる。
海に流れ込んでいる滝の上には、観光地としても有名な温泉が滝になって流れ、滝壺が湯船になっていたカムイワッカ湯の滝がある。数年前から立ち入り禁止になっていたのだが、つい先日の調査で落石により滝壺の湯船はすっかり跡形もなくなっていたそうだ。

そして海に流れ込むカムイワッカ大滝。
ここは戦前、硫黄採掘のための強制労働をさせられていた人々が寝泊まりをさせられていたタコ部屋があった。

一説によるとタコ(労働者)達は1日15時間もの労働を休みなく課せられ、粗末な寝床と食事を与えられていた。150kgもの荷物をわずか2人で運ばされ、逃げるものは追跡され、あるいは山中で遭難。捕まったモノは見せしめとしてリンチが加えられたそうだ。

断崖が果てしなく続く知床半島。
働くも地獄、逃げるも地獄。彼らに希望など、なかっただろう。

※当然のことながらこんなことは歴史の教科書には載っていない。僕も北海道の強制労働の話などつい最近知ったことだ。「日本残酷物語(5)近代の暗黒」にこのあたりのことに詳しそうだ。

そんな知床の歴史を語る新谷さん。
外面の良い情報ばかりではなく、歴史の闇を知り、後生に伝えてゆくことも僕らの責任だ。

崖を爆破し、タコ(労働者)達を生き埋めにしたという場所を何事もなかったように波が洗っていた。

Akira

北海道出身、旅と写真と山とダンス好き。
クラニオセイクラルやタイマッサージなどのセラピストとして活動しつつ、ウェブ制作も手掛ける。
旅ネタの多い、気まぐれブログ。
詳細プロフィール

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