焼岳の山小屋暮らしと「北の国から」

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「結婚したら水道のある暮らしがしたいね」
極北の地アラスカでは今でもそんな会話が普通にされる。北アルプスの山小屋の暮らしもそんな世界だ。

山小屋の水道

僕が今いる北アルプス焼岳の山小屋「焼岳小屋」も水は天水(雨水)に頼っている。近くに川は無く、もちろん水道も下水ない。すべては自分たちでなんとかする。

春先、小屋開けと共に屋根の下に雨どいを取り付け、そこから水のタンクへと貯めてゆく。タンクの入り口には落ち葉や虫が入り込まないように不織布のようなものでフィルターをし、ごく微量の塩素を添加して消毒する。タンクからはパイプを繋ぎ、水圧や高低差を利用して水を流す。水道管となるパイプや蛇口はすべてホームセンターで購入できるし、やる気さえあればさほど難しいこともない。飲み水にする場合はさらに浄水器にかけ飲む。十分に美味しい水をいただける。

今年の8月は雨続きで水に困ることは無かったけれど、9月に入って雨が降らず、水不足が慢性化した。僕らの衣類の洗濯にも水の残量と相談しなければならないし不便な暮らしだ。

水事情は山小屋によってぜんぜん違う

普通水は山に降り注いだ雨が土や森の木々に染みこみ濾過され、岩肌から水がしたたり、いくつものしたたりが小さな流れになり、沢となり、川となり、海へと流れてゆく。水道の多くは川から取水し利用する。山の稜線では、このプロセスから考えると水がたまる前の段階にあるのでどこかから水が流れてきたり、貯まっていることは基本的に無い。
ゴゼンタチバナの実
北アルプスの山小屋燕山荘が編み出した山の水革命が、沢水をポンプを使って山小屋まで持ち上げる方法だ。
場合によっては数百メートルもの標高差を水は駆け上がってゆく。シーズンはじめのパイプの設置には一苦労するのだけれどそれさえ済めば、ポンプ用のエンジンを回しさえすれば水はどんどん山小屋へ運ばれてゆく。

もちろん人間に都合よい地形ばかりではない。山小屋によっては天水頼みの小屋もたくさんあるし、あるいは水に恵まれた尾瀬の山小屋ではタンクを持たず、水は使い放題という場合もある。様々だ。大型の山小屋でも天水頼みで日照りが続けば、スタッフがお風呂に入れなくなることもしばしば。

ドラマ「北の国から」の水道

倉本聰のドラマ「北の国から」は富良野出身の父親が東京育ちの小さな子供達をつれて、自然厳しい富良野の土地で生きてゆく作品だ。最初は水も電気もなく、子供達が1キロ離れた沢から水をくんでくることが日課だった。

やがて冬がきて、子供達が水くみをするのが難しくなったところで父親は自宅まで沢水を引く仕組みを子供達とともに整備する。そんなことを繰り返し、都会育ちの息子が厳しい生活の中で少しずつ成長してゆく。
涸沢ヒュッテのナナカマド
父親は言う。
「都会の暮らしだけじゃ無くこんな暮らしも子供達に伝えておきたいんだ」
と。

Akira

北海道出身、旅と写真と山とダンス好き。
クラニオセイクラルやタイマッサージなどのセラピストとして活動しつつ、ウェブ制作も手掛ける。
旅ネタの多い、気まぐれブログ。
詳細プロフィール

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