書評リチャード・マシスン「縮みゆく男」最後の瞬間まで生き抜くこと

広告

「ある朝、目覚めると俺は毒虫の姿になっていた」
のはフランツ・カフカ「変身」だ。

SF系のストーリーは最初に読み手を異世界に導くのが基本だ。
「ある日、宇宙人がやってきて俺は超能力を得た」
「ある日、机の引き出しからタヌキ型ロボットが現れた」
「ある日、地球最後の日がきた」
など。

縮みゆく男

リチャード・マシスン「縮みゆく男」の主人公はある日をさかいに身体が小さくなりはじめる。

一日にきっかり1/8インチ(約3.2mm)ずつ。
180cmを超える巨体がいつの日か妻よりも背が低くなり、やがて幼い娘よりも小さくなってゆく。

その縮小の速度は発症してから一度も止まること無く、時計の針が進むようにきっちり縮まってゆく。

自らの存在が物理的にも社会的にも小さくなり、精神は大人のままの主人公は苦悩してゆく。妻との関係も悪化し、日に日に何もできなくなってゆく自分。

身長が20センチを切り、飼い猫に襲われ、幼い娘に人形のように運ばれ悲鳴をあげる。

小説自体は主人公の最後の7日間を軸に、過去をフラッシュバックしつつ進んでゆく。今でこそフラッシュバックの手法は普通だが、1950年台ではまだ実験的な構成だった。

最後まで生き抜く

身長が2センチを切り、地下室の蜘蛛に怯えながら、最後の瞬間まで生き抜くために食料を集め、水を集め、必死に地下室からの脱出を試みる主人公。

「おれは何のためにこんなことをしているんだ?どうせあと2日でおれという存在は消えてしまう。いや普通の人間の社会の中ではもうとっくに存在など消えてしまっているのに・・」

確実に迫り来る死に向き合いながらも最後の瞬間まで生き抜くことを決意する主人公。

巧みな描写で最後まで読者を飽きさせない構成は素晴らしい。

ぼくらの人生ではまた明日が来るなんて保証は何もない。
そんなことを思い出させ、だからこそ今日を一生懸命、生き抜こうと想い出させる傑作だ。

参考:
映画評論家・町山智浩「報われない人が元気になれる小説『縮みゆく男』」

Akira

北海道出身、旅と写真と山とダンス好き。
クラニオセイクラルやタイマッサージなどのセラピストとして活動しつつ、ウェブ制作も手掛ける。
旅ネタの多い、気まぐれブログ。
詳細プロフィール

この記事は公開から1年以上経過しています。
情報が古くなっている可能性がありますのでご注意下さい

シェアする

フォローする