香港の雑居ビルの宿から-アジア放浪記(1)

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香港の街角でぼくと変わらない年齢の女性が手作業で土木工事をしていた。
すぐ横には、高級ホテルから出てきた観光客が歩いてゆく。

香港に来るのは初めてだった。
日本を離れる少し前から沢木耕太郎の「深夜特急」を読みなおしていた。
香港からはじまる沢木の旅も、はじまりは香港だった。

沢木が旅したのは昭和50年頃。ぼくが生まれるか生まれないか、そんな昔のこと。
彼の作品からあふれるアジアの猥雑さ、雑踏といった混沌にあこがれた。

しかし日本もそうであるように40年の月日は、怪しげだった東南アジアの街をどこかで見たような風景へと変化させた。
規格化された街の風景。もうアジアなんてものはないのじゃないかと思えてしまう。

九龍の古い古い雑居ビルは、各フロアにゲストハウスが入居している。
どこに泊まるか何も決めずに歩いていた僕はエレベーターロビーで勢いのあるオバちゃんに声をかけられた。
「宿を探しているの?うちにおいで!取って食べたりしないわよ!」
戸惑っているぼくの腕をひっぱり、エレベーターに乗せる。
「じゃあ部屋をみて決めるよ」

安宿の廊下

宿のある12階の廊下は陽の光も入ってこない水色に近いグレーの壁と天井の配管が目についた。
普通のマンションのように廊下のあちこちにドアがあり、ところどころに宿の看板が貼ってある。廊下には洗濯物もぶら下がっていて、どこの国出身なのかわからない巨体の黒人が歩いていた。

おばちゃんが見せてくれた部屋は、窓もない3畳ほどの部屋だった。
備え付けのベッドが2つ、天井に扇風機とエアコン、14インチのテレビ。トイレとシャワーが半畳ほどのスペースにあった。
雑居ビルの宿-香港

「いいね、アジアっぽい」
でも一泊3000円は高い。そう漏らすとオバちゃんはギャーギャー喋り出す。
「そんなこと言うけどね、香港が中国に返還されてこっち物価があがって大変なのよ、まったく。だいたい・・・・」

まだ英語耳になっていないのですべては聞き取れなかった。面倒くさくなったし、もう夕方だったので泊まることにした。
どうせ他にあてもないのだ。

九龍の街角香港

Akira

北海道出身、旅と写真と山とダンス好き。
クラニオセイクラルやタイマッサージなどのセラピストとして活動しつつ、ウェブ制作も手掛ける。
旅ネタの多い、気まぐれブログ。
詳細プロフィール

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